私達の体育館で、隣町のバスケットボールクラブと
対外試合が行われた時の事です。
他のチームと試合をする時は、相手チームと混同しないように、
ユニフォームは、黒と白の2種類を持参するのが基本でした。
そして、この日の対戦相手は、黒系のユニフォームだったので、
私達は、白のユニフォームを着て試合をする事になりました。
結果までは、よく覚えていないのですが、長時間プレイの為、
レギュラー達が、ひどく疲れていたのは記憶に残っています。
なので、試合後の後片付けは、
補欠だった私と妙子(たえこ)ちゃんの2人でやる事になりました。
レギュラー達は、みんな帰り、私達も掃除が終わった事で、
更衣室にカバンを取りに行った時の事でした。
間違って、妙子ちゃんが、隣りのロッカーを開けたところ、
黒のユニフォームが、中に入っていました。
この日は、白のユニフォームしか着なかった為、
ロッカーの中に黒のユニフォームを忘れてしまったようです。
背番号が「7」だったので、
ポイントゲッターである智子ちゃんのユニフォームである事が、
すぐに分かりました。
そして、妙子ちゃんも私と同じように
ユニフォームを持っていないクラブ生だったので、
すごくユニフォームに憧れがあったようです。
妙子ちゃん:「めぐみちゃん、みんなには絶対に内緒ね」
私: 「分かってるって。誰にも言わないよ」
他人の物である事は分かっていたのですが、
妙子ちゃん、衝動を抑える事が出来ず、着てしまいました。
妙子ちゃん:「見て見て、これで私もレギュラーよ」
私: 「似合うじゃない。カッコイーッ!」
そう言うと、妙子ちゃん、照れくさかったのか、
人差し指で鼻の下をこすっていました。
イラスト by 浅葱様
初めて着るユニフォームの感動を心行くまで堪能した後、
私にも着用を勧めて来ましたが、私は絶対に自分のユニフォームを
手に入れてやるんだと思っていたので、断りました。
その後は、脱いだユニフォームを
何事も無かったかのように元に戻しておきましたが、
結局、私も妙子ちゃんも最後の最後まで
自分のユニフォームを持つ事は出来ませんでした。
そして、この事は、2人だけの秘密にしておきました。